◆肺炎は予防できます
「日本人の死因の第四位は肺炎」であることをご存知ですか。最近では、抗生物質の効かない細菌が増えてきており、高齢者の肺炎による死亡率は年齢とともに高くなっています。
肺炎にかからないように気をつけるには、日常生活での予防が大切です。また、肺炎球菌によって引き起こされる肺炎を予防するためには、肺炎球菌のワクチンを接種することもできます。今日からできる簡単な予防習慣を身につけましょう。
◆今でも怖い肺炎!
年次推移明治から昭和の初期にかけてわが国の死因別死亡率の第1位は肺炎でした。第2次大戦後治療薬(抗生物質)の開発が進んで死亡率は急速に低下しましたが、今また増えつつあります。悪性新生物(ガン)、心疾患、脳血管疾患の三大死因に次いで、肺炎の死亡率は第4位です。割合でみても亡くなる方の約10%は肺炎が原因です。しかも、肺炎がもとで心筋梗塞、脳梗塞、心不全などの合併症を引き起す場合もあり、まだまだ怖い病気です。
肺炎は、微生物(細菌、ウイルス、真菌(カビ)など)が肺の内部で増殖して発症します。風邪やインフルエンザをこじらせると肺炎になりやすくなり、重症化すると死に至る危険性があります。
また、肺炎で亡くなる方の95%は65歳以上の高齢者が占めており、他の病気で体力が落ちている患者さんや、免疫力が弱くなっている高齢者の方は特に肺炎に対する注意が必要です。熱が上がったり咳や痰が出たりしたときは早めにお医者さんに診てもらうようにしましょう。
◆肺炎の原因とは?
肺炎の原因には多くの種類があります。肺炎球菌のような細菌性肺炎、ウィルス性肺炎のほか、マイコプラズマ菌、真菌(カビ)といった微生物による感染性のもの、間質性肺炎のように非感染性のものも含めて広く肺の炎症性疾患を肺炎と呼んでいます。それぞれ症状や治療法が違うので注意が必要です。しかし、インフルエンザシーズンにおける細菌性肺炎では50~60 %が肺炎球菌によるものです。この肺炎球菌は健康な人の口の中に常在していることが多いので、体力が落ちているときやお年寄りになって免疫力が弱くなってくると肺炎を引き起こします。
肺炎球菌が引き起こす主な病気として、肺炎、気管支炎などの呼吸器感染症や副鼻腔炎、中耳炎、髄膜炎などがあります。
また、肺炎球菌が原因の肺炎にかかった場合は抗生物質などで治療しますが、近年抗生物質が効きにくい肺炎球菌が増えてきています。
現在臨床で分離される肺炎球菌の30~50%は抗生物質が効きにくいという報告もあります。*1
このため、事前に予防することの重要性が見直されています。
*1 :
(1983-1995年)池本秀雄ほか. Jpn J Antibiot. 1998;51(7): 437-474
(1995-2004年)後藤元ほか. Jpn J Antibiot. 2006; 59(5): 323-354
原因
◆予防が大切!
肺炎は予防が大切です。
適度な運動、バランスのとれた食事、十分な睡眠
天気のよい日には外へ出て陽光を浴びたり、散歩などの適度な運動をしたり、バランスのとれた食事を摂ることで体力をつけると免疫力が上昇することも知られています。睡眠を十分にとって、健康的な生活を心がけましょう。
・禁煙
禁煙も重要です。タバコの吸いすぎはよくありません。
・誤嚥
誤嚥を避けましょう。お年寄りになると、飲食物を飲み込む力が弱くなり、誤嚥を起こすことがあります。誤嚥とは、食べたものや飲んだものが誤って食道ではなく気管に入ってしまうことです。誤って飲食物を肺に吸い込んだ際に、細菌が肺に入ってしまい肺炎を引き起こすこともあります。
・歯みがき
歯みがきは口からの細菌の侵入を防ぎます。誤嚥性の肺炎の予防には、寝る前の歯みがきをおすすめします。1日5回の歯みがきで肺炎のリスクを3分の1に減らせたという報告もあります。歯と歯の間や歯茎、それと舌も綺麗にしましょう。
・うがい、手洗い、入浴
呼吸器の病気なので口の中の衛生も大変重要ですが、病原体は手から口を通しても侵入するので、うがいと同じように手を洗うことも心がけましょう。また、入浴などによりからだを清潔に保つことも大事です。
・基礎疾患の治療
基礎疾患の治療も肺炎の予防では重要です。
・ワクチンの接種
肺炎のすべてを予防できるわけではありませんが、インフルエンザワクチンだけでなく肺炎球菌ワクチンの接種も重要です。
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・問診票のダウンロードは こちらから